NHK大河ドラマ「べらぼう」で描かれる江戸時代。
この時代、庶民の生活に欠かせなかったのが銭湯でした。
今回は、江戸時代の銭湯文化とそのエコシステムについてご紹介します。
江戸っ子と銭湯
江戸っ子はお風呂が大好きでした。
意外にも、仕事前と仕事終わりの1日2回お風呂に入ることも珍しくありませんでした。
しかし、各家庭にお風呂があったわけではありません。
水は貴重で、燃料の薪も高価だったため、一般家庭はもちろん、豪商や武士の家、宿屋にもお風呂がないことが多かったのです。
そこで登場するのが「湯屋」と呼ばれた銭湯です。
江戸時代後期には、なんと600件もの銭湯があったと記録されています。
多くの人々が利用したため、料金は格安で、江戸中期から後期では8〜10文(現在の約96〜120円)程度だったそうです1。
それが安いのかよくわからないところです。
現代なら120円でお風呂にはいれるのはすごく安く感じますが、当時の人の感覚としてはどうだったのかな?と疑問が残ります。
銭湯の変遷
初期の銭湯は蒸し風呂でした。
その後、蒸し風呂と現代の浴場の中間のような「戸棚風呂」が登場します。
これは蒸し風呂の中に小さく浅い浴槽が作られたもので、蒸気と湯の両方で熱効率を良くしようと工夫された形でした。
混浴文化
驚くべきことに、江戸時代の銭湯では混浴が一般的でした。
風紀が乱れるとして何度か禁止令が出されましたが、あまり徹底されず、多くの混浴の湯屋が残っていました。
しかし、蒸し風呂の中は薄暗く、蒸気がもくもくと充満していたため、現代人が想像するような「丸見え」状態ではなかったようです。
また、様々な身分の人が利用していたため、マナーも保たれていました。
現代なら、すぐに性犯罪とか危険な事に気を配らなくてはいけませんが、江戸時代はすごくおおらかだったんですね。
でも・・・親の立場だと、自分の子供を混浴のお風呂に入れるのは抵抗がありますね。
銭湯のエコシステム
江戸時代の銭湯は、現代の視点から見ると驚くほどエコフレンドリーなシステムを採用していました。
湯を沸かすための燃料として、各家庭から出たごみを利用していたのです。
これは、現代でいうリサイクルシステムの先駆けとも言えるでしょう。
具体的には以下のようなごみが燃料として使われました:
- 木屑
- 紙くず
- 藁(わら)
- 落ち葉
これらの廃棄物を燃料として活用することで、資源の有効利用と廃棄物の削減を同時に実現していました。
驚いてしまうのは銭湯は現代のごみ焼却施設だったということです。
私が小さいころ住んでいた新潟県では、ごみ焼却施設の横にお風呂の施設があって、誰でも自由に無料で入ることができたんです。
江戸時代のようなすごい仕組みだったなぁと地味に感動しています。
江戸時代のリサイクル文化
江戸時代は、「もったいない」精神が根付いた循環型社会でした。
これは銭湯だけでなく、日常生活のあらゆる面に及んでいました。例えば:
- 衣服:庶民が着る服はほとんどが古着か、繰り返し修繕したものでした。
- 鍋釜:「鋳鉄師(鋳掛屋)」と呼ばれる職人が、ひび割れや穴の開いた鍋釜を修理していました。
- 傘:骨組みだけになった傘は「古傘買い」が買い取り、張り替えて再販売されました2。
このように、江戸時代の人々は、あらゆるものを最後まで使い切る工夫をしていたのです。
詳しくはこちらに書きました。
銭湯の社会的役割
銭湯は単なる入浴施設ではなく、重要な社会的機能も果たしていました。
コミュニティの中心地
男性客向けに、銭湯の2階には娯楽室が用意されていました。
追加料金を払えば、お茶やお茶菓子が用意され、世間話や囲碁・将棋などを楽しむことができました。(一説には無料の場合もあったようです)
これは、銭湯が単なる入浴施設ではなく、社交の場としても機能していたことを示しています。
その娯楽室には犯罪のネタなどがリークされる現場として岡っ引きなどが潜んでいたようです。
それくらいいろいろな人が出入りしていたんですね。
身分を超えた交流の場
様々な身分の人々が利用する銭湯は、身分の違いを超えて交流できる貴重な機会を提供していました。
武士も町人も銭湯では平等でした。
裸の付き合いですもんね。
「べらぼう」の世界と銭湯
NHK大河ドラマ「べらぼう」で描かれる江戸時代後期の世界。
この時代、銭湯はすでに江戸の生活に深く根付いており、人々の日常生活や社会構造に大きな影響を与えていました。
ドラマの中では、銭湯が単なる背景として描かれるだけでなく、人々の交流の場や情報交換の場として重要な役割を果たしている様子が見られるかもしれません。
まとめ
江戸時代の銭湯文化は、現代の私たちが想像する以上に進んだシステムを持っていました。混浴という驚きの文化から、ごみのリサイクルを活用したエコフレンドリーなシステム、そして身分を超えた交流の場としての機能まで、多様な側面を持っていたのです。
「べらぼう」の世界を通じて、私たちは江戸時代の人々の知恵と工夫を垣間見ることができます。
現代社会が直面する環境問題やコミュニティの希薄化といった課題に対して、江戸時代の銭湯文化から学べることは多いのではないでしょうか。
時代は変われど、人々が集い、くつろぐ場所としての銭湯の本質は変わっていません。
たまには地域の銭湯を訪れて、江戸時代から続く入浴文化を体験してみるのも良いかもしれません。
そこには、現代社会では失われつつある、人と人とのつながりや、自然との共生の知恵が息づいているかもしれません。